2012年08月30日

これってなに?

なに?と、普段見慣れているモノとの違いに気づくのは重要でしょう。
気づいても、そのままにしておくと忘れてしまう、小さななに?
なに?に興味を持ち続け、研究し続ける持続力は、貴重ですね。
なに?から気付いたことを、仕事や生活に活かすことが出来るか、と考える力、
そして、実行に移す、具体化の力。

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こんななに?を製品開発に繋げた好例を、無印良品「足なり直角靴下の開発ヒストリー」に見ることが出来る。
順番に見ていくと、こうなる。
■出発点のなに?は、チェコのおばあちゃんが編んだ「直角の靴下」との出会い。
■通常の靴下は120度。直角は手編みならではの角度。
■直角は、立っているときの足首の角度。履く人の履き心地を追求したデザイン。 
■直角は、かかとがすっぽり収まって、ズレ落ちにくく、履き心地が良い。
■手編みの直角靴下を機械編みする、製品化への取り組み。
■2006年 発売。「足なり直角靴下」とネーミングした。
■2010年 無印良品のすべての靴下が直角になった。
■2011年 リニューアル。目的は、製品の良さを見直し、良さをきちんと伝える努力をすること。(1)製品のリニューアル(2)50,000人のはき心地体験キャンペーン

なに?というひっかかりから、履く人の履き心地を追求したデザインだと発見した「人間工学」に適うデザイン、それを機械編の製品化として実現した。

◎リニューアルの際の<心地良さのわけの探索の図>無印良品くらしの良品研究所
http://www.muji.net/lab/project/socks/110817.html

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2012年08月29日

利用者のこと

UDエンジニアリングで行う調査のなかで重要なリアル・ユーザー・テストには9つの成立条件がある。*日本ユニバーサルデザイン研究機構「リアル・ユーザー・テストの成立条件Ver.1.1」
そのひとつは、
1. 実利用者が被験者である。
というものなのだが、この「実利用者」について考えたい。

調査でいう「実利用者」は、その製品やサービス(以下にて、製品はサービスを含む)を利用する一般の利用者(ユーザー)のこと。
一般とは、製品に関わる人でないこと。つまり、その製品の製造や販売に関わる人でない、また、その製品のコンペティターの製造や販売に関わる人でない、また、調査やマーケティングに関わる人でないこと。
利用者とは、その製品の利用者であること。調査設定条件によって、調査対象の製品の利用者、また、その製品のコンペティター製品の利用者ともなる。

例えば、
ある産地の昆布を一般家庭で使ってもらいたいが、ネット販売では一般家庭の利用者がなかなか増えてくれない、このネット販売の問題点を調査する場合の対象者を<昆布を使って料理する人>とする。
対象者を抽出するためウェブアンケートを行い、<昆布を使って料理する人>を探し、<昆布を使って料理する人>の中から調査協力が可能な人を探し、メールや電話で協力を依頼するが、このやり取りの間、対象者に予断を持たせることなく、日常的な生活を維持する中で自然な形で調査に協力してもらえるよう配慮しなければならない。
ここで適正な実利用者に参加してもらえるかが、調査上の重要条件の半分を占めている。


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このブログは、フィールド調査とユーザー調査を基軸に、効率良いオーダーメイドの研究・開発支援サービスを行う、株式会社ラパンアジル 寺内美知子が書いています。
お問い合わせ等は <info@lapin.co.jp> へお願い致します。

ラパンアジル歳時に関するウェブ調査についてのご案内
2008年ハロウィンからクリスマス、お正月・・最新イベントまでのデータを公開中。
http://research-lapin.seesaa.net/
次回はハロウィンアンケートを予定しています。

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2012年08月24日

選択的注意

かつて、赤ちゃんを抱いていた頃の私は、街中が赤ちゃんでいっぱいのように見えた。
これは面白い経験で、統計上の数字とは全く関係のない、けれど自分では「実感」と感じる不思議な感覚だった。
しかし考えてみると、いつも世界は関心事でフォーカスされているのだ!

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賑やかな夏の砂浜で聞こえるさまざまな音、歓声も音楽もアナウンスも波音も子供の声も混じる、その中で自分の名前が呼ばれたら・・聞き取りにくそうでも、けっこう聞き取れるのが自分の名前・・これは自分の名前という関心事に、選択的注意が働くから、と考えられる。

さまざまな情報が混ざり合う環境で、個人にとって重要な情報を選択して注意を向ける認知機能を、心理学用語で「選択的注意」という。
砂浜の例は、カクテルパーティー効果と言われる聴覚によるものだが、視覚でも同じようなことが起きる。たとえば、同じ環境にいても、考古学が好きなR君は化石や黒曜石などを見つけるのが上手で、昆虫が好きなK君はカブトムシを見つけるのが上手、というように。

このこと、関心事に関わる情報はいくらでも入ってくるように思えるのに、関心領域を少し外れると入ってこない、ということを意識できているか、意識できていないかの差は大きいように思える。
選択的注意が働くということは、選択的注意の外が生まれるということで、盲点やミスが起きやすい、ことに繋がる。多様な気配りが必要なときは、選択的注意の外もしっかり意識していこう。


ラベル:人間観察 五感
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2012年08月16日

クツヌギ石

日常生活のなかでの動作をやりやすくし、より快適な生活をするために、アフォーダンスを利用するとうまくいくことがある。

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アフォーダンス
アフォード(afford):〜ができる、〜を与えるの意味を持つ動詞からギブソンがつくった造語。アフォーダンス(affordance)は、事物をどう扱うかに関する事物の持つ物理的特徴、その特徴が示唆する意味のこと。

アフォーダンス理論は、知覚心理学者ジェームズ・ギブソンによって1960年代に完成された理論で、それまでの認知理論の<人が環境から受けた刺激を脳で処理して意味のある情報としている>という考えを否定し、<情報は環境そのものに存在している>とした革新的な理論で、その後の認知科学、人工知能論に大きな影響を与えてきている。
1988年に認知心理学者ドナルド・ノーマンが『誰のためのデザイン?──認知科学者のデザイン原論』のなかで、デザインの領域で利用されるアフォーダンスとして<モノに備わる、人が知覚できる行為の可能性>という意味で用いてから、この文脈でのアフォーダンスの利用が始まった。

環境にある意味の発見
たとえば「地面」は、土や岩や石などから構成されて、ここにあるが、人はそこに、歩けるとか、野菜を植えられるといった「意味」を発見する。
これを「椅子」に置き換えると、通常「座れる」アフォーダンスを与える椅子だが、玄関に置かれると<荷物を置く台>に、あるいは、風呂場に置かれると<脱いだ衣類を置く台>としての「意味」が発見され、あらたなアフォーダンスが現れる、というように。

意味を発見しやすい環境作り
「意味」を発見しやすい環境を作ることが、アフォーダンス利用ということになるのだが、具体的にはこんな方法で。
靴が散乱する玄関 ⇒ 靴の向きが揃う玄関
毎回「揃えてぬいで〜」と声掛けしないと揃わない玄関の靴たち。この玄関の利用者に声をかけないで、環境作りだけで、靴を揃えてぬいでもらう、という試みをアフォーダンスを利用してやってみることが出来る。
日本家屋の玄関や和風庭園の縁側の上がり口には平らな石が据えられる、この石は「沓脱石」と呼ばれ、場を美しく整えつつ、履き物をぬぐ場所はここだ、と示す効果がある。さらに、ここに向きを揃えた履き物が置かれていれば、ぬぎ方を示す効果も醸し出す。
この沓脱石をイメージするモノ(石でも板でもよいが、きちんと感のあるモノ)を設置して、向きを揃えた靴を置いておく。
すると、この玄関の利用者は、きちんと感のある石を認知 ⇒ 揃えられた靴を認知 ⇒ 揃っている靴の隣に靴をぬいでしまう、という一連の行為を、石のアフォーダンスが引き出してしまう。

余談
1979年に亡くなったギブソンの遺灰はコーネル大学構内に散灰されたが、その灰を撒いたあたりに植えられたという木を、発達心理学者エレノア・ギブソン夫人が示している写真を見たことがある。
それはごく自然な雰囲気の木で、記念樹らしさや墓っぽさは感じられなかった。
posted by ラパンアジルblog at 18:26 | TrackBack(0) | 感性工学 | 更新情報をチェックする