2012年08月16日

クツヌギ石

日常生活のなかでの動作をやりやすくし、より快適な生活をするために、アフォーダンスを利用するとうまくいくことがある。

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アフォーダンス
アフォード(afford):〜ができる、〜を与えるの意味を持つ動詞からギブソンがつくった造語。アフォーダンス(affordance)は、事物をどう扱うかに関する事物の持つ物理的特徴、その特徴が示唆する意味のこと。

アフォーダンス理論は、知覚心理学者ジェームズ・ギブソンによって1960年代に完成された理論で、それまでの認知理論の<人が環境から受けた刺激を脳で処理して意味のある情報としている>という考えを否定し、<情報は環境そのものに存在している>とした革新的な理論で、その後の認知科学、人工知能論に大きな影響を与えてきている。
1988年に認知心理学者ドナルド・ノーマンが『誰のためのデザイン?──認知科学者のデザイン原論』のなかで、デザインの領域で利用されるアフォーダンスとして<モノに備わる、人が知覚できる行為の可能性>という意味で用いてから、この文脈でのアフォーダンスの利用が始まった。

環境にある意味の発見
たとえば「地面」は、土や岩や石などから構成されて、ここにあるが、人はそこに、歩けるとか、野菜を植えられるといった「意味」を発見する。
これを「椅子」に置き換えると、通常「座れる」アフォーダンスを与える椅子だが、玄関に置かれると<荷物を置く台>に、あるいは、風呂場に置かれると<脱いだ衣類を置く台>としての「意味」が発見され、あらたなアフォーダンスが現れる、というように。

意味を発見しやすい環境作り
「意味」を発見しやすい環境を作ることが、アフォーダンス利用ということになるのだが、具体的にはこんな方法で。
靴が散乱する玄関 ⇒ 靴の向きが揃う玄関
毎回「揃えてぬいで〜」と声掛けしないと揃わない玄関の靴たち。この玄関の利用者に声をかけないで、環境作りだけで、靴を揃えてぬいでもらう、という試みをアフォーダンスを利用してやってみることが出来る。
日本家屋の玄関や和風庭園の縁側の上がり口には平らな石が据えられる、この石は「沓脱石」と呼ばれ、場を美しく整えつつ、履き物をぬぐ場所はここだ、と示す効果がある。さらに、ここに向きを揃えた履き物が置かれていれば、ぬぎ方を示す効果も醸し出す。
この沓脱石をイメージするモノ(石でも板でもよいが、きちんと感のあるモノ)を設置して、向きを揃えた靴を置いておく。
すると、この玄関の利用者は、きちんと感のある石を認知 ⇒ 揃えられた靴を認知 ⇒ 揃っている靴の隣に靴をぬいでしまう、という一連の行為を、石のアフォーダンスが引き出してしまう。

余談
1979年に亡くなったギブソンの遺灰はコーネル大学構内に散灰されたが、その灰を撒いたあたりに植えられたという木を、発達心理学者エレノア・ギブソン夫人が示している写真を見たことがある。
それはごく自然な雰囲気の木で、記念樹らしさや墓っぽさは感じられなかった。
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posted by ラパンアジルblog at 18:26 | TrackBack(0) | 感性工学 | 更新情報をチェックする

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